21/07/2026
正確な情報が手元にない状態で、正しい経営判断はできません。
ジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984』には、「ニュースピーク」という架空の言語が登場します。政府が語彙をあえて削り、複雑な概念を表す言葉そのものを社会から消していくことで、人々が「考えること」自体を難しくしていく、という設定です。言葉が痩せれば、思考も痩せる。逆に言えば、豊かで正確な言葉を持つことは、自由に考え、正しく判断するための土台だということを、この小説は寓話の形で突きつけてきます。
これは海外展開の現場にもそのまま当てはまります。現地語の一次情報を自社の言葉で正確に理解できていない企業は、断片的な伝聞や粗い機械翻訳の訳文をもとに意思決定せざるを得ません。ニュアンスの落ちた情報、文脈を欠いた数字は、「ニュースピーク」的に痩せた言葉と同じで、判断の解像度を確実に下げます。
翻訳・通訳・海外リサーチという仕事の本質は、単に言葉を置き換えることではなく、現地の情報をできる限り豊かな解像度のまま、意思決定者の手元に届け直すことにあります。何が起きているかを正確な言葉で把握できて初めて、企業は「考えること」の自由を保ったまま、海外展開の判断を下せます。
情報が痩せた状態で下す決断ほど、後から取り返しがつきません。海外との接点が増えるほど、言葉と情報の精度に投資する価値は上がっていきます。
#海外展開